組織ぐるみ情報収集 JR西幹部辞任 遺族ら「遅すぎた」

 JR西日本が「会社ぐるみ」を認めた。JR西日本福知山線脱線事故の報告書漏洩(ろうえい)問題。新たに判明した垣内剛元社長ら別の幹部による、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(現・運輸安全委員会)への接触に、JR西の佐々木隆之社長は23日、「組織的行動と言わざるを得ない」と語った。遺族らは怒り心頭だ。

 同日、国交相に提出されたJR西の内部調査などによると、同社が接触をしていたのは事故調鉄道部会の委員全6人のうち4人。うち旧国鉄出身の3人の委員すべてに、JR西幹部が報告書作成中に会っていた。

 この日、取締役を事実上引責辞任した山崎正夫前社長に加え、当時トップだった垣内元社長も学生時代の友人だった楠木行雄委員と接触し、昼食した事実が発覚。「漏洩はなかった」としながらも、約1万2千円の昼食代は垣内元社長が支払ったという。鉄道部会の3人の国鉄OBのうち、唯一接触がないとされていた宮本昌幸委員にも、幹部による面会が判明した。

 また、JR西社員を対象にしたアンケート調査で、鉄道部会の委員への働きかけを知っていた社員が36人もいたことも分かった。

 佐々木社長は「世の価値観とも乖離(かいり)していた。鉄道技術の知識なら委員より自分たちの方が正しく、いろいろ知っているというおごりがあった(から接触しても大丈夫と思った)」と反省の弁を述べた。

 次々と明らかになる不祥事と幹部らの引責辞任に、事故で長女を亡くした奥村恒夫さん(62)=兵庫県三田市=は「漏洩問題は組織としての問題であり、前社長らを切ったところでトカゲのしっぽ切り」と怒りがおさまらない。長女を亡くした藤崎光子さん(69)=大阪市城東区=は「(辞めさせる)決断が遅すぎた」と批判した。